詐欺をしない詐欺師 1日目

詐欺をしない詐欺師

2●●●年●月●日
突然だが俺には未来を見る力がある。
それが見えるのは道を歩いている時だったり、寝ている時だったりと様々だ。
見える範囲はかなり先の未来しか見えず、正直いうと役に立たない。
しかも見える内容でギャンブルに関係するものを見たことがない。
本当に役立たずだ。

それなのに最近、今起きたことなのか未来に起きたことなのか判断できない場面が出てきた。
だから、今の記憶を守るために日記を書くことにした。

今日もまた獲物を狙って、街を徘徊していた。
そんな中、目に留まったのは、騙しやすそうな大きな荷物を持ったおばあさんがいた。
怪しまれないように近づき目的地まで他愛のない話をしながら手伝いをした。


そして、おばあさんがお礼をさせてほしいという言葉を引き出し、俺はお決まりの言葉を言う。
「もし私に未来が見える力があるとして、いずれ高値が付く商品をあなたは買いますか?」と。
初めは不審そうな表情をされるが、俺の中の事実をしっかりと説明していくうちに、「そんなことができるの?」と驚きの表情を浮かべた。
今日の利益が確定した瞬間である。


俺は、こうして自分の力を使って、日々の糧を得ている。
他人から見れば、きっと詐欺になるのだろう。
だが、今回売った商品も俺にとっては高値になることは事実で確定事項。
それが、このおばあさんが亡くなってから事実になるとしても騙しているわけではない。

これからも俺の中の事実があやふやになる時、日記を書いていこうと思う。

 

 

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